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デジタル一眼カメラ上級者向け特別講座 連載 第4回 プロカメラマンのRAW現像テクニック 夜景写真をより幻想的な作品に仕上げてみましょう
被写体の魅力を際立たせたり、雰囲気を思いどおりに演出したり。デジタル一眼カメラ“α”に付属するRAWデータ現像ソフト「Image Data Converter SR」で、写真の表現はさまざまに広がります。今回は写真家の藤城一朗先生に、夜景の写真を幻想的な作品に仕上げる方法について聞きました。自然な雰囲気を損なわず、街の明かりやライトアップされた夜空を幻想的に見せるにはどうすればいいのか。わずかな調整で変わる夜景の表情に注目です。

※ 本文中でご紹介している付属ソフトウェアは、2011年5月18日の情報です
    付属ソフトウェアの最新情報は、「ソニー製カメラ ソフトウェア サポート・お問い合わせ」でご確認ください

デジタル一眼カメラ上級者向け特別講座 バックナンバー


第1回 「RAW現像」で写真をより印象深い「作品」に仕上げてみませんか?

第2回 RAWデータ現像ソフトを使ってより印象的な作品に仕上げてみましょう

第3回  プロカメラマンのRAW現像テクニック 女性の写真を印象的に仕上げる方法とは?

「知っているけど初めて見る」 そんな不思議な風景が夜景写真にはあります

普段なにげなく通り過ぎていた街角が、夜のネオンサインや車の明かりによって、思わず立ち止まってしまうほど新鮮に感じられることがあります。夜景写真の魅力は、風景が持つ普段とは違った一面を収められることです。さらに露出を絞って光に形をつけたり、スローシャッターで自動車のライトの軌跡を描いたりすることで、肉眼では見られない、夜景ならではの幻想的な写真に仕上げることもできます。

夜景写真を撮るときは、「イルミネーションのきらめきを撮る」、「ライトアップされたビルを撮る」など主題をはっきりさせてカメラの設定を調整していくと、自分が撮影時に感じた“狙い”に近い魅力的な作品になっていきます。この夜景写真はRAWデータで記録して、RAWデータ現像ソフトで調整を加えることで、たとえば陰影を強めたり発色を見た目に近づけたりといった主題をより明確にする“仕上げ”が可能になります。このような「作品に仕上げていく作業」はフィルムを使用する銀塩カメラの頃にもおこなわれていましたが、RAWデータ現像ではフィルムの現像時以上に微妙な調整ができます。しかもRAWデータ現像で適用した設定は、大がかりな暗室や機材、薬剤を使うフィルムと違って瞬時に元に戻すことができるので、大胆な設定も気軽に試すことが可能です。それでは、RAWデータ現像で広がった夜景の表現をご紹介します。

写真家 藤城 一朗さん 学習研究社映像局を経て、現在はフリーランスにて出版、コマーシャルフォトなどさまざまなシーンで活動。デジタルカメラは1990年代後半からいち早く導入。社団法人日本写真家協会会員。

“トーンカーブ”を使って、狙った部分だけを明るく調整してみましょう

夜景

“トーンカーブ”は、直線のグラフにカーブをつけることで、写真の明るさや色合いを調整できる機能です。カーブの角度を強めたり弱めたりすることで調整効果の強弱をつけられます。

夜の街の光と暗がり、またはライトアップされた建物と夜空など、明暗差が大きくなることが多い夜景の写真では主題としたい被写体に露出を合わせると背景の明るさをうまく表現できないことがあります。かといって主題と背景の両方に合うような中間的な露出では、表現がどっちつかずになって写真の魅力が薄れてしまいますね。

左の写真は、北海道・小樽に旅行した時、行灯のやわらかな光と色が気に入って収めた一枚です。絞り値をF22まで絞ることで行灯から漏れる光を光芒として表現し、明かりのやわらかな雰囲気はそのままに行灯の存在を強調して撮影しました。一方で写真の左半分、繁華街に通じる雪道が暗く“今日はもう店じまい”といった沈んだ雰囲気が全体に感じられるような写真になっています。行灯の光はそのままに、背景の雰囲気を華やかなものに変えるために「Image Data Converter SR」の“トーンカーブ”調整機能で写真の明るさを調整しました。

RAWデータ現像時に“トーンカーブ”調整を使うと、一定の範囲の輝度だけを調整でき、主題を中心に露出を合わせることが可能になります。「Image Data Converter SR」で明るさを調整する際によく使用するのは、“明るさ”項目です。“明るさ”項目を調整すると写真全体の明るさを変更できるので、「よく撮れている写真だけど、もう少しだけ明るくしたい」といった際に便利な機能ですね。しかし、夜景写真では“明るさ”項目だけで調整をおこなうと、暗い夜空まで明るくなるなど、意図しない補正結果になる可能性があるんです。なので、今回のように特定の部分の明るさを変更する場合は、“トーンカーブ”を使った調整がおすすめです。

“トーンカーブ”調整ではグラフ線を上下に動かして変形させることで、写真の特定部分の輝度(明るさ)や発色を調整することができます。では、グラフ線はいったいどこを動かせばいいのでしょうか。“α”で撮影したRAWデータを「Image Data Converter SR」で開くと、画面左側の画像表示エリアに写真が表示されますね。そうしたら写真の中で明るくしたい場所、この写真では手前の雪道部分にマウスカーソルを合わせてみましょう。すると“R、G、B、Y”の数字が下部にあるステータスバーに表示されます。このとき“Y”に表示されている数値が、明るくしたい部分の輝度です。

写真の明るくしたい部分の数値を調べて“トーンカーブ”のグラフを調整 ステータスバーにはマウスカーソル(手のひら型のアイコン)がある部分の色、R(赤)/G(緑)/B(青)と輝度(Y)、写真の座標位置のデータが表示されます。

“Y”(輝度)の数値を参考に、“トーンカーブ”のグラフ線をつまみ、グラフの上方向に引き上げます。“トーンカーブ”のグラフ線は、撮影時の状態だと斜め45度にまっすぐ伸びる正比例のグラフになります。このグラフの線を上下に動かすことで、特定の色や明るさの部分を集中的に調整することができるんです。“トーンカーブ”のグラフ中にある数値の目安となる点線は、左端の始点から0、64、128、192、255となっています。この写真は道路の雪部分を中心に明るくしたいので、雪の明るさがちょうどいいと感じるところまでグラフを持ち上げます。

これで影など暗い部分はそのままに、雪道を中心とした部分が集中的に明るくなりました。行灯と奥に輝く繁華街が雪道で一本につながって、写真全体に華やかさと奥行きがあらわれて狙っていた表現に近づきました。ただ、行灯以外の部分の発色が緑がかっていて、ホラー映画のワンシーンのようにも見えるのが気になります。もちろんこの写真に怖さはいらないので緑色の発色も“トーンカーブ”調整で修正しました。表現したかった行灯のやわらかい橙色の光はそのままに雪道の発色がより自然になり、雪の明るさや雪あかりも肉眼で見たときの印象を表現できたかと思います。

“トーンカーブ”グラフでY(輝度)を表示しているとき、横軸は調整前の輝度、縦軸は調整後の輝度を表しています。ドロップダウンリストを切り替えることで、 Y(輝度) /R(赤)/G(緑)/B(青)の調整ができます。

主題はそのままに、背景を明るくして全体を華やかに仕上げる 行灯の光のやわらかい明るさや「クロススクリーンフィルター」というレンズフィルター(※)の効果による四角い光芒が気に入っている写真ですが、行灯の光を中心に露出を合わせたので、手前の雪道が少し暗くなりました。そこで、“トーンカーブ”調整で繁華街に通じる雪道の見通しをよくして、繁華街の華やかさを写真全体に広げました。また、緑がかった発色も行灯の光の色を変えないよう“トーンカーブ”で調整しました。

※ レンズフィルターとは、主にレンズの先端に取り付けるレンズアクセサリーのこと。レンズ前面を保護する「MCプロテクター」や水面の反射やガラスの映りこみを抑えたり、青空の色などを濃く鮮やかにしたりしてメリハリのある写真を撮影できる「円偏光フィルター」、色彩を変えずに光量だけを減少させることができる「NDフィルター」などがある。今回の「クロススクリーンフィルター」は他社製品を使用
デジタル一眼カメラ“α”のフィルターについて詳しくはこちら

藤城一朗さんのここがポイント 写真のある部分を集中的に補正したいときは、“トーンカーブ”が
便利です。夜景写真は、照明の輝きや影の濃さはそのままに、中間部分だけを自然な雰囲気で明るくすることができます。

夜空をより夜らしく見せる発色調整のやりかた

夜景

夜景写真に水銀灯や車のヘッドライトなど、ホワイトバランス設定が異なる光が同時に写真内に入ることがあります。さまざまな種類の明かりを1枚の写真に収めたことで、写真の一部分だけが緑がかったり赤みがかった発色になったりすることもあります。ここでは“トーンカーブ”を使った発色の調整と、夜空をより夜空らしく見せるテクニックをご紹介します。

左の写真は名前のとおり7色にライトアップされた東京のレインボーブリッジです。色の移り変わりなど7色の光を忠実にとらえていますが、夜空が少し緑がかっていて不自然な印象を受けます。また、その場で見たときの印象とも異なっています。夜空の暗さは十分なのに、なぜ夜空が緑がかっていると不自然さを感じるのでしょうか?

わたしたちは、無意識のうちに夜空の色を黒や濃紺といった色で記憶しています。そのため、黒や濃紺以外の色が夜空として表現されていると不自然さを感じてしまうのです。これは“記憶色”という一種の先入観です。先入観はイメージや発想を縛るといったマイナス面がありますが、夜景写真では記憶色の先入観を応用することで、夜空をより夜空らしく見せることができます。

ライトアップされた橋の色を変えずに夜空の発色だけをピンポイントで調整するには、さきほどと同じように“トーンカーブ”を使います。調整したい部分、この写真では緑かぶりをしている夜空にマウスカーソルをあわせて三原色と輝度を確認しましょう。緑色を抑えたいので、トーンカーブ設定はY(輝度)ではなく、G(緑)の数値を使います。夜空のG(緑)は40前後になっています。“トーンカーブ”のリストをG(緑)に合わせてグラフ横軸の40近辺をグラフの下のほうに引っ張りましょう。夜空が濃紺に近い、より黒いイメージに変わっていきます。ただ、G(緑)の発色を抑えたことで今度は別の色が強く出るようになりました。東京タワー近辺の空に注目してください。夜空が少し赤みがかっています。ですので今度はR(赤)を調整して目標とする濃紺の夜空にします。

“トーンカーブ”のグラフの1か所だけを動かすとグラフは弓型に大きく変形し、ねらいとする部分だけでなく広範囲に影響が出てしまいます。“トーンカーブ”調整では変更したい色や明るさ(輝度)を中心に、周辺も巻き込んで調整をおこないます。その結果としてグラフは弓型に変形し、周辺を巻き込むことで自然な雰囲気を保ったままでの調整ができるようになっているのです。しかし今回は意図しない部分にも調整が適用されてしまいました。この場合はグラフ線を上下に動かして、元あった正比例の場所に戻すことで調整します。

調整はわずかに“トーンカーブ”を動かしただけですが、写真全体の雰囲気は大きく変化しました。夜空の色を濃紺に近くしたことで、写真に現実味が増して「知っているけど初めて見る」東京の夜景になったかと思います。

緑がかった夜空を補正するためにG(緑)の発色を抑えました。しかしG(緑)が弱まった影響で、今度はR(赤)系統の発色の強さが目立つようになったため、R(赤)を弱くして発色の微調整をしています。そして、最後にY(輝度)を整えました。

緑がかった夜空の発色を“トーンカーブ”で調整 橋の色を忠実に再現するため細心の注意をはらって撮影しました。RAWデータ現像では橋の色はもちろんそのままに、緑色の夜空を記憶色を応用した濃紺へと変えることで、夜の雰囲気を高めています。また、影になっている島の輪郭を出したかったので“トーンカーブ”のY(輝度)補正で暗部を持ち上げています。

藤城一朗さんのここがポイント “トーンカーブ”はグラフを少し動かすだけで雰囲気が大きく変わります。夜空を“記憶色”である紺色に補正すると、夜の雰囲気はさらに深まります。

パソコン鑑賞向け、印刷向けと調整を分けることで、夜景はさらに美しい作品になります

微妙な明るさや色調整ができるRAW現像の登場によって、夜景写真の表現の可能性が広がりました。ただ、調整は作品づくりをサポートするツールであって、真っ暗に映ってしまった写真をきらめくような夜景写真に変えるといったことはできません。撮影時には、とくに写真の明るい部分が真っ白に記録される“白とび”や、撮影など暗い部分が真っ黒に記録される“黒つぶれ”には注意が必要です。“白とび”、“黒つぶれ”には階調の情報がなく、白や黒で塗りつぶすように記録されるため、明るさ調整を適用しても白や黒がグレーになってしまいます。

もうひとつ、「Image Data Converter SR」を使った明るさ調整はパソコンの画面で見る場合と、印刷する場合とで調整内容を変えることをおすすめします。ブログにアップロードするなどパソコンで鑑賞する写真は、画面を見たままでの調整で大丈夫です。プリンターを使ってご家庭で印刷する場合は、プリンターに合わせた明るさ調整をすることで作品がより印象的になります。

わたしの経験では、家庭向けインクジェットプリンターは階調表現力がデジタル一眼カメラの半分ほどであることが多く、印刷すると予想外の“白とび”、“黒つぶれ”が出てくることがあります。印刷向けの調整をする場合は、写真のディティールがはっきりする強めの明るさ調整を適用すると同時に、何度か試し印刷をして調整の効果を実際に紙上で確認してみてください。パソコンの画面とプリンターの発色の傾向が微妙に違う場合も、試し印刷をすることで確認できます。「これだ」と思う調整データができたら、「Image Data Converter SR」の“バージョンスタック機能”(※)を使って“パソコンでの鑑賞向け”、“印刷向け”と分けて保存しておくと便利ですよ。少しの変化でイメージが大きく変わる夜景写真の楽しさを、みなさんもぜひ味わってください。

※ “バージョンスタック機能”は、「Image Data Converter SR」のVer.2.0以降に追加された機能です

写真家 藤城 一朗さん

現実感と不思議さが融合した夜景写真には、明るさや発色をわずかに変えるだけで表情がさまざまに変化する奥深さがあります。RAWデータ現像ソフト「Image Data Converter SR」は、写真の新しい魅力を引き出すお手伝いをします。

※ “SONY”および“make.believe”はソニー株式会社の商標です
※ “α”はソニー株式会社の商標です
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