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デジタル一眼カメラ上級者向け特別講座 連載 第5回 プロカメラマンのRAW現像テクニック 情感のあるモノクロ作品に仕上げる モデル:小笠原希帆 衣裳協力:FREAK'S STORE
被写体の魅力を際立たせたり、雰囲気を思いどおりに演出したり。デジタル一眼カメラ“α”に付属するRAWデータ現像ソフト「Image Data Converter SR」で写真の表現はさまざまに広がります。今回は写真家の藤里一郎さんに、デートで撮影したスナップ写真をモノクロ写真へと現像する方法について聞きました。色彩を失くすことで生まれる非日常的な雰囲気や写真から立ち上がる空気感など、モノクロ写真ならではの情感あふれる作品を生み出すコツをお伝えします。

※ 本文中でご紹介している付属ソフトウェアは、2011年6月30日の情報です
    付属ソフトウェアの最新情報は、「ソニー製カメラ ソフトウェア サポート・お問い合わせ」でご確認ください

デジタル一眼カメラ上級者向け特別講座 バックナンバー


第1回 「RAW現像」で写真をより印象深い「作品」に仕上げてみませんか?

第2回 RAWデータ現像ソフトを使ってより印象的な作品に仕上げてみましょう

第3回  プロカメラマンのRAW現像テクニック 女性の写真を印象的に仕上げる方法とは?

第4回  プロカメラマンのRAW現像テクニック 夜景写真をより幻想的な作品に仕上げてみましょう

無彩色で奥深い、モノクロ写真の表現を味わってください

みなさんはモノクロ写真と聞いて、どんなことを想像しますか?力強さでしょうか、レトロなイメージでしょうか。モノクロ写真には“色彩”というインパクトの強い情報がないぶん、撮影者が込めたメッセージや撮影時の空気といったものを、より強く写真に落とし込むことができるとぼくは思っています。そのせいかモノクロでの撮影と聞くと、ふだんに増してやる気というか「勝負!」という気持ちが格闘家のように高まってきます(笑)。

ただ、最近はモノクロ写真=芸術作品という雰囲気が少なからずあって、とっつきにくさや難しさを感じている方がいらっしゃるかもしれません。モノクロ写真のお手軽な入り口として、まずは手元にある写真をモノクロにしてみましょう。RAWデータなら、過去にカラー撮影した写真をすぐにモノクロにすることができます。見慣れた風景写真も雰囲気が変わり、新しい表情を発見できるかもしれません。どうでしょうか?「もうひとつピンとこないな」と思っていた写真も、モノクロにすることで表現が整理されて雰囲気が見違えることがあります。でも、これはまだ入り口に過ぎません。次はモノクロであることをイメージして、撮影と現像に挑戦してみましょう。モノクロであると意識することで、わずかな諧調の変化から生まれる硬さや柔らかさといった質感など、奥深い表現の楽しさに触れられると思います。

現像作業を通じて撮影後も写真と向き合えるのは、RAWデータ撮影の大きなメリットです。今回は、女性とのデートで撮影した写真を例として取り上げてみます。ぼくは撮影中に感じたことやインスピレーションを大切に、できるだけそのまま写真に落とし込みたいと思っているので、実はふだんはJPEGでの撮影が多いんです。でも、デートなど特別なイベントには、RAWデータでの撮影が向いているんじゃないかと思います。楽しかったデートを写真を見て振り返るだけじゃなく、RAW現像をすることで追体験することができます。写真が狙いどおりの作品になっていくにつれて、デート中に感じた楽しさや撮影の緊張感、ワクワク感を、もう一度味わうことができますよ。

写真家 藤里一郎さん 写真家 大倉舜二氏に師事し、1996年独立。男っぷりのよい写真、色香あふれる写真を得意とし、個展や雑誌、インターネット媒体など幅広いジャンルで活躍する。

“ハイコントラストなモノクロ写真で“目力”と黒髪を表現してみましょう

今回のテーマはなんといってもデートですから、彼女をふだん以上にキレイに撮りたいと思うのは当然のことです。キレイに撮れば撮るほど、ぼくだけじゃなく彼女も幸せになりますし(笑)。でもしゃかりきになって撮影していると、いつの間にかデートじゃなくて撮影会のようになってしまいます。せっかくのデートですから、楽しく撮影しましょう。楽しく撮影するコツのひとつに“決めごと”を設けましょう。決めごとといっても単純です。「笑顔禁止」、「10秒間まばたき禁止」など、狙いとしている表情やしぐさが撮れるよう彼女にお願いするんです。こうしたことをきっかけに彼女は「なんで?」とふくれたり、笑ったり。きっといろいろな表情を見せてくれるはずです。

クリエイティブスタイルを変更すると、”明るさ“など作業中のほかの設定がすべてリセットされます。モノクロ化は現像のはじめにおこないましょう。

横顔を写した右の写真は、吸い込まれるような瞳と髪の黒さを強く感じられるように、ハイコントラストの表現に徹底した一枚です。撮影場所は強い潮風が吹く浜辺でした。潮風に顔を向けたことで閉じ気味になったまぶたと、涙でうるんだ瞳の黒さを見せたかったので、彼女に目が乾くのを少し我慢してもらいました。また、輪郭やまぶたのふくらみなど顔のラインや起伏がわかるギリギリまで肌を白く補正することで、瞳と髪の黒さを際立たせています。もうひとつ、水平線をわざと傾けて不安定さを出しています。水平線や地平線は傾けないのが基本とされていますが、この写真にはつい目が引き寄せられる不安な感じが合っているので。

それでは、RAWデータ現像の話に移りましょう。まず「Image Data Converter SR」の“クリエイティブスタイル”で“白黒”を選択して写真をモノクロにしました。“クリエイティブスタイル”を使えば、メニューから選択するだけで引き締まった黒を表現できます。次に明るさとコントラストを補正します。この写真ではコントラストを最大の“100”に設定して、小鼻や頬のふくらみといった顔のラインを見えるか見えないかのギリギリに抑えると同時に、肌の質感もなくして瞳と髪の黒さを引き立てました。また、“トーンカーブ”で背景の空と海の白さにまざりあう寸前のところまで、顔や首筋部分の明るさとコントラストを微調整しています。

さらに“Dレンジオプティマイザー”を適用して、首筋の影や髪の生え際の表現をやわらげました。この写真にはマニュアル設定で適用し、“シャドウディティール”は髪の黒さの表現を第一に考え “0”に設定。“ハイライトトーン”は肌の白さと立体感のバランスが取れるところを探し出しました。

コントラストを高めることで瞳と髪の黒さを強調 トーンカーブは“Y(輝度)“の項目のみを変更します。”R(赤)”などを変更するとカラー写真に戻ってしまいます。わずかな変更でも写真の表情が変わるので、画面に表示される仕上がりの変化を確認しながら調整しましょう。

藤里一郎さんのここがポイント “トーンカーブ”は写真全体ではなくある部分の明るさを変えることができます。カーブを“S字型”にするとハイコントラストに、“逆S字型”にするとローコントラストな表現になります。

色彩のないモノクロ写真だからこそ、写真に込めた思いがより強く伝わります

「せっかくの撮影デートだし晴れてほしいなあ」とは誰もが思うことです。ぼくも今回の撮影は「夕日の中でカッコいい写真を撮る!」とはりきっていました。しかし現実は、今にも雨が降り出しそうな曇り空。天気の急変など撮影もデートもなかなか理想どおりにはいかないものです。ぼくは想定外のことが起こったら最初の計画を引きずらず、気持ちを切り替えて新しい撮影や表現にチャレンジすることを心がけています。そのほうが、できないことを悩むよりずっと楽しいじゃないですか。

右の写真は、透き通ったイメージを表現しようとコントラストを思いきって下げ、透明感と同時に非現実的で不思議な雰囲気のある作品に仕上げました。モノクロにしたことで曇った空の印象がなくなっていますよね。カラー写真は、作品の印象を色彩から判断されることがあります。この作品もカラーのままであれば、見る人が空が曇っていることについ気を取られてしまい、伝えたいメッセージが薄れたでしょう。モノクロ写真にしたことで色彩から感じる天気の印象が消えて、メッセージが強くなると同時に、異世界のような幻想的な雰囲気が生まれました。

RAWデータ現像では、“クリエイティブスタイル”で“白黒”に変換した後に、全体のハイライトやシャドー部分の明暗差はそのままに、トーンカーブで明るさを補正しました。さらに、コントラストをほぼ最低まで下げて透明感を高め、最後に“明るさ”を約2段分下げて、暗めのしっとりとした雰囲気へと調整しています。

ローコントラストな表現で透明感を出す コントラストを下げたことで写真に透明感が増しました。波打ち際がガラスのように光って見えるのも狙いどおり。

色彩を消すことで、見せたい表現に視線を集中させることができます

カラーでも雰囲気のある写真がモノクロでより印象的に 「Dレンジオプティマイザー」は、シャドウを低めに設定・適用しています。影になりやすい部分のディティール表現をぼかし、頬のモチっとした感じを高めています。

欲しいイメージの写真を撮るため、モデルさんにポーズをお願いするのはよくあることです。ただ、デートでは互いに照れたり、どういうこと?といぶかられて相手にされなかったりすることもあります(苦笑)。左の写真を見てください。岩の上に彼女が寝そべっています。ここまで来るには長い道のりがありました。「岩の上に座れる?」、「ちょっと手をついてみようか」と、順序と段階をふんで寝そべってもらいました。まさにデートのお作法です(笑)。

撮影では、シャッターを切る瞬間に特に意識が集中します。でも撮影はそのずっと前、待ち合わせた彼女と出会った時にもう始まっているんです。写真はコミュニケーションです。相手と一緒に楽しい時間やハッとするような時間を作って、その時間、時間の頂点でシャッターを押す。たとえばふだんは車で移動するのに、今回はなにも言わずに鉄道で移動する。ドキドキワクワクがふくらみます。そうやって相手とのコミュニケーションを大切にし、いろんな時間を過ごすことで素敵な写真が自然に撮れるはずです。

女性や赤ちゃんの頬はモチっとしていてやわらかそうで、思わず手を伸ばしたくなります。左の写真では、そんなやわらかい質感を視覚で表しました。ゴツゴツした岩の感じ、ふわっとした麻の服、やわらかそうな彼女の頬。3種類の質感を一枚の写真の中で対比させ、思わず触れてみたくなる感じを狙いました。カラーのままでも質感は伝わってくるのですが、カラーだと服の色につい目が行ってしまいがちです。モノクロにすることで色彩の主張が消え、初めから顔に注目を集めることができます。

この写真には、「Image Data Converter SR」を使って白黒変換のほか、“明るさ”と“Dレンジオプティマイザー”の補正を適用しています。“Dレンジオプティマイザー”は髪をわざと黒つぶれ気味にして、顔との対比を強める補正を適用しています。黒髪との対比で、もちっとした印象の、やわらかそうな頬が表現できました。こういった写真はデートならではですし、映画のワンシーンのような、女性をひとり占めにしている感じが出せたと思います。

藤里一郎さんのここがポイント “Dレンジオプティマイザー”は写真全体の明るさはほぼそのままに、ハイライト部分やシャドー部分のディティールの強弱を表現できます。明るい部分だけ、暗い部分だけと強調したい部分を選べるので微調整をするときに便利です。

最初はシンプルなテーマでモノクロ写真の楽しさを体感してください

「Image Data Converter SR」を使ったRAWデータの現像は、フィルム時代の暗くて薬品臭い暗室作業とは正反対のいわば“明室作業”です。コーヒーなどを飲みながら気軽に、そして変更した設定がすぐ反映されるのでとても楽しいですね。ただ、気軽に調整できるぶん「こういう写真や表現にしたい」というイメージがないと、いつまでも納得できる写真はできあがりません。「あれがいいんじゃないか」、「これがいいんじゃないか」といろいろ試すうちに迷っちゃう。そうならないよう撮影の時点から目指す写真や表現の方向性を常にイメージしてみてください。

ただ、慣れないモノクロ写真で仕上がりを完全にイメージするのは難しいもの。最初は「ハイコントラストに」、「ローコントラストに」などシンプルなテーマを持って写真をイメージして、撮影と現像をおこなってみてください。モノクロに慣れると、撮影時に景色をモノクロでとらえることができるようになります。そうなればしめたもので、狙ったとおりのモノクロ写真を表現できるようになります。

モノクロ写真は“白”と“黒”と“グレー”しかなく、この3つの明暗の差だけで被写体の姿や形、質感などを表現しています。しかしひとくちに白と言っても、白の中にも純白に近い白や透明感のある白までさまざまな白があります。同じように黒の中にもグレーに近い黒から強く沈む黒まで、そしてグレーも明るさの違いによって多様です。たとえば写真の中に黒いエリアがたくさんあって、その黒が微妙な諧調で被写体を表現している場合、写真には硬いイメージが生まれます。白、黒、グレーの明暗差の中にわたしたちはさまざまな主題やメッセージを感じ、そして相手に伝えることができます。みなさんもデートや日常などでたくさんのモノクロ写真を撮って、見て、シンプルながらも奥深いその表現をぜひ楽しんでください。

写真家 藤里一郎さん

明暗差を変えることで作品の表情が一変するモノクロ写真。シンプルながら奥深い表現に写真の楽しさを再確認することができました。RAWデータ現像ソフト「Image Data Converter SR」はこだわりの画質調整と魅力ある表現の追求をサポートします。

※ “SONY”および“make.believe”はソニー株式会社の商標です
※ “α”はソニー株式会社の商標です
※ 本ページに掲載している情報は2011年6月30日の情報であり、予告なく変更される場合がございます
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