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デジタル一眼カメラ上級者向け特別講座 連載 第6回 プロカメラマンのRAW現像テクニック 花火のきらめく一瞬を心に残る作品に仕上げる
被写体の魅力を際立たせたり、雰囲気を思いどおりに演出したり。デジタル一眼カメラ“α”に付属するRAWデータ現像ソフト「Image Data Converter SR」で写真の表現はさまざまに広がります。今回は写真家の藤城一朗さんに、打ち上げ花火の写真をより印象的な作品へと仕上げる方法について聞きました。花火ならではの瞬間の輝きを一枚の写真に残す。矢のように過ぎ去っていく美しさを際立たせる撮影とRAW現像のテクニックに注目です。

※ 本文中でご紹介している付属ソフトウェアは、2011年7月20日の情報です
    付属ソフトウェアの最新情報は、「ソニー製カメラ ソフトウェア サポート・お問い合わせ」でご確認ください

デジタル一眼カメラ上級者向け特別講座 バックナンバー


第1回 「RAW現像」で写真をより印象深い「作品」に仕上げてみませんか?

第2回 RAWデータ現像ソフトを使ってより印象的な作品に仕上げてみましょう

第3回  プロカメラマンのRAW現像テクニック 女性の写真を印象的に仕上げる方法とは?

第4回  プロカメラマンのRAW現像テクニック 夜景写真をより幻想的な作品に仕上げてみましょう

第5回  プロカメラマンのRAW現像テクニック 情感のあるモノクロ作品に仕上げる

写真は一瞬で消える花火の美しさを永遠に残すことができます

写真家 藤城 一朗さん 学習研究社映像局を経て、現在はフリーランスにて出版、コマーシャルフォトなどさまざまなシーンで活動。デジタルカメラは1990年代後半からいち早く導入。社団法人日本写真家協会会員。

夜空を彩る大輪の光の華、それが打ち上げ花火です。菊の花のように広がったり、何発も同時に開いたり、はたまた土星や人気キャラクターが夜空に広がったりと、いろいろな形で私たちを驚かせてくれます。花火は数秒で消えてしまう一瞬の芸術です。消えてしまう感動を味わうのもよいのですが、写真でその一瞬を記録するのも楽しいもの。打ち上げ時にただよう煙をわざと残して地上の風景を幻想的に彩ったり、撮影中にカメラを動かして流れ星のように花火の光を流したりして、美しさや不思議さを加えられるのも花火写真の楽しさだと思います。

打ち上げ花火のイメージというと、みなさんは暗い夜空をバックに打ち上がっている姿を想像するのではないでしょうか。しかし、花火は常に真っ暗な夜空に打ち上がるわけではありません。たとえば、ビルの明かりや街の光が花火写真に入ることはよくあります。また、撮影前に背景が真っ暗に見えたとしても、低く垂れた雲に花火の光が反射して夜空が明るく写る、といったこともあります。花火写真をRAWデータで記録すると、明るさや色味を自分がそのとき感じた印象へと整えることが可能です。たとえば、花火が白とびするのを防止するために露出アンダーで撮った写真をRAW現像で適切な露出に戻すこともできますし、街の明かりで意図しない明るさになった空のトーンを調整することも可能です。RAWデータで記録し、RAW現像ソフトの調整機能を使いこなすことで、花火の写真をより印象的に美しく仕上げることができるのです。

打ち上げ花火を印象的に撮るテクニックをご紹介します

打ち上げ花火を撮影できる花火大会は、夏の一大イベントですね。とは言っても日常の忙しさもあって、足を伸ばす機会は意外と少ないのではないでしょうか。それに加えて暗い夜空に光が乱舞する打ち上げ花火は、日中の風景写真とは違う撮影テクニックが必要なため、「RAW現像で調整する前に、そもそも満足いく写真が撮れない」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。そこで、まずはRAW現像の前に花火写真の基本的な撮りかたについてお伝えします。

光が真円に広がる菊花型花火は、日本の花火の代表格だと思います。ふわっと丸く広がる花火を見ると「やっぱり花火はいいなあ」としみじみ思ってしまいます。花火は開いた時の形も見どころのひとつ。形の美しさを表現するためにも、花火の全景を入れるように撮影してみましょう。しかしながら、打ち上げ花火を画面からあふれそうなくらい、いっぱいに撮ることはかなり難しいんです。打ち上げ花火はそれぞれ大小がありますし、さらに打ち上がる高さも違います。それに合わせてカメラを操作するのは相当な知識と経験が必要になります。ですので、まずは少し引いたアングルで花火の全景を写し込むようにしたほうが失敗が少なくなります。

何種類かの打ち上げ花火を撮影して「同じように撮ったのに、こっちは狙いどおりに、でもこっちはなぜかイマイチ……」と感じたことはありませんか? 打ち上げ花火とひと口に言っても、大きく分けて3種類あります。一輪の花のように夜空に大きく浮かび上がる“単発もの”、花火全体の形の素晴らしさを楽しむ“型もの”、そしてさまざまな花火が連続して打ち上がる“連発もの”。実はこれらにはそれぞれ違う撮りかたのコツがあるんです。

打ち上げ花火の撮影は、シャッターを切るタイミングが重要になります。特に花火の一発一発が主役となる“単発もの”と“型もの”は、どの瞬間でシャッターを切ったかが作品づくりの上で重要なポイントになってきます。“単発もの”は、花火が開いた姿だけでなく“爆発点”が写真に入るようにシャッターをタイミングよく切るのがコツとなります。爆発点とは打ち上げ花火の爆発の中心部分のことで、“爆発点”があるとないとでは写真の迫力や雰囲気がまったく変わってきます。“爆発点”を写真に入れ込むためには、花火玉が打ち上げられたあとに空に昇っていき炸裂する瞬間を見計らい、炸裂の少し前にシャッターを開くと収めやすくなります。一方、“型もの”はその形を捉える(記録する)タイミングでシャッターを切ることが大事です。

また、花火の光跡を流れる線のように表現するのであれば、カメラの撮影モード設定を“M(マニュアル)”モードにして撮影することをおすすめします。一般的に、花火が打ち上がってから爆発し、消滅するまでは、おおよそ4〜5秒程度です。このためシャッタースピードも4〜5秒程度を目安に設定すれば、光の軌跡を写し止める確率が高くなります。私の場合、ISO感度を200にした時は、シャッタースピードは4〜8秒程度に、絞りはF16〜22程度に設定し、露出の過不足を確認しながら撮影するようにしています。

失敗例(1) “爆発点”がない花火写真は少し迫力に欠ける “単発もの”をとらえた一枚ですが“爆発点”がありません。画竜点睛を欠き、どことなくさみしい印象があります。
失敗例(2) “連発もの”の花火は露出設定に注意 連発もので光の量が多く、露出オーバーになってしまいました。右上の小さな花火を中心に白とびが発生しています。また、どの花火にも“爆発点”がありません。

成功例 花火が開いた時の形が収まるように広めの構図で撮るとうまくいく 露出が適正で、花火の微妙な色合いの違いが表現されています。
また“爆発点”があることで、一つひとつの花火に躍動感があります。

赤、緑、青など花火はさまざまな色の光がとても印象的です。すべての色を可能なかぎり写真に収めるため、花火写真では白とびをおこさないよう露出をアンダー気味に設定します。このとき、特に注意したいのが“連発もの”の撮影です。“連発もの”は数発がほぼ同時に炸裂するため、“単発もの”や“型もの”にくらべて光の量が格段に多くなり、白とびが発生しやすくなります。スターマイン(速射連発花火)のような“連発もの”を撮るときは、−1.5EV前後を目安に露出を抑えめにして撮影することをおすすめします。まずは白とびを起こさないことに気をつけながらRAWデータで記録し、後からRAW現像作業で適切な明るさに調整していくという手法ですね。

打ち上げ花火の撮影には、全体を撮ったり、クローズアップで狙ったりと、いろいろな撮りかたがあります。露出の設定やカメラの撮影モードもその撮りかたに応じて変化します。シャッタースピードひとつ取っても、風景として花火を狙う場合は4秒程度より長い露光をするのが基本となりますが、見た目に近い花火の動きをとらえる場合は、おおよそ1/60秒以下となります。

花火大会に出かける際にぜひ用意したいのが、カメラを固定する三脚です。三脚があれば、同じ打ち上げ花火を撮るにしてもさまざまな撮りかたができるので、作品の幅も広がります。さらに、カメラに触れずにシャッターを切ることができる「シャッターレリーズ」があれば、シャッターを押す瞬間に生じるわずかなブレも防ぐことができます。

夕焼けに浮かぶ花火とともに夏の詩情を表現してみましょう

花火大会はそれぞれにいろんな表情があります。もちろん、規模の大小や打ち上げられる花火の種類の違いもありますが、開催場所や時間によっても表情が大きく変わるんです。たとえば、遊園地や都市では空と地上とが光で覆われるように輝き、郊外では真っ暗な空に目もくらむような鮮やかな花が咲きます。また、どの花火大会もクライマックスでは何十発、何百発もの花火が打ち上がって、まさに“お祭り!”という雰囲気になります。でも、花火大会が始まったばかりの、夕暮れ時に打ち上げられた花火にも、暮れなずむ雰囲気と重なってなんとも言えない風情があって、わたしは好きですね。

この写真はそんな夕暮れ時に感じる一抹の寂しさを、花火という派手な被写体を用いることで逆説的に表現したものです。花火写真の基本のひとつは、先ほども言いましたが、花火が開いたときの美しさを表現できるよう花火の全景をとらえることです。これに背景を大きく入れることで、周囲の雰囲気を写真に加えることができます。右の写真は広角レンズを使って花火だけでなく、背景も含めた広い空間を捉えようとしたものです。シンプルな画面構成にしたことで、日が暮れる直前の空のグラデーションと打ち上げ花火の姿の美しさが映える一枚になりました。花火を通じて夏の風情を表現するのもおもしろいですよ。

補正前でも上空の暗さはかなり良い雰囲気です。夕焼けの赤から夜空の青へのグラデーションを補正し、撮影意図をより強調していきます。

(1)高輝度色再現を“アドバンス”に設定 (2)Y(輝度)を調節 (3)B(青)を調節 (4)R(赤)を調節

check! “白とび表示”、“黒つぶれ表示”で白とびと黒つぶれを確認します。提灯の部分に白とび箇所がありますが、花火の火花の部分は諧調がしっかりと残っています。

RAW現像時の調整では、夕焼けの赤い空と夜空の暗い空へと移り変わるグラデーションの再現を重視しました。まず、「Image Data Converter SR」の“高輝度色再現”の項目を“標準”から“アドバンス”に変更して、全体的なトーンを整えます。そして、夕暮れの微妙な明るさを再現するために“トーンカーブ”でY(輝度)を調整します。高輝度色再現の適用で夕景の空が狙いより暗くなったので、やや明るく調整しました。

次に、空の青さ、暗さを強調するため、「Image Data Converter SR」の“トーンカーブ”のB(青)を調整します。空の半ばから上空へ向かって藍色から濃紺へとなめらかに変わる夜空の印象が、たそがれ時の夏空の高さを連想させてくれます。ただ、このままでは夕焼けの雰囲気が損なわれているので、最後に“トーンカーブ”のR(赤)で沈んだ太陽に近い地表付近の空が赤みを帯びるように調整しました。

花火の背景となる夕焼けの赤みと空の暗さを強調 <調整した項目> ●高輝度色再現:アドバンス ●トーンカーブ:「Y(輝度)補正」、「B(青)補正」、「R(赤)補正」 “トーンカーブ”を調整して、たそがれ時の雰囲気を高めてみました。 “トーンカーブ”による空の色調と明るさの調整は、背景に市街地やビルの明かりが写りこんだ時にも有効です。

藤城一朗さんのここがポイント 花火だけでなく前景や背景を写し込むことで表現の幅が広がります。花火を引き立てる空の表情は、“トーンカーブ”で明るさや色調を調整すると、雰囲気が一層高まります。

花火の一瞬の美しさを最高の一枚にする楽しさを、ぜひ味わってください

イベント性といい“お祭り”という雰囲気といい、打ち上げ花火は花火写真の王様とも言える存在です。しかし、家庭用の花火でも花火写真の楽しさが気軽に体験できるのでおすすめです。家庭用花火ならちょっとした用意で、すぐにでも撮影を始められます。使用する機材も“α”本体と標準ズームレンズが1本あれば、いろいろな表情を撮影できます。

家庭用花火の撮影は家族を写したスナップ写真としても楽しいですし、露出設定や花火と背景とのバランスといった花火写真の勘所をつかむことで花火大会に向けた練習にもなります。線香花火やねずみ花火などのような見慣れた花火も、写真に収めることで意外な姿を見せてくれます。家族や友達など大勢なら、わいわい笑いながら花火と写真を楽しめていいですね。

写真家 藤城 一朗さん家庭用花火の撮影家庭用花火の撮影

打ち上げ花火の撮影では、三脚を使ってのスローシャッター撮影や、白とびをさせないための露出アンダーでの撮影など、ちょっとした準備やコツが重要になります。慣れないうちは失敗も多くなるでしょう。ただ、失敗と感じた写真を振り返ることで、失敗は克服できます。それに、失敗したと感じた写真から何か新しい発見をするかもしれません。たとえば、“花火写真”という狙いとは違っていても、家庭用花火の写真にはとてもいい笑顔が収められていることがよくあります。また、RAW現像時の調整で見かたを変えることで、写真が夏の風情を感じる風景写真になることもあります。そんな素敵な写真を失敗と片づけてしまうのはすごくもったいないじゃないですか。「失敗は成功のもと」です。失敗したら、そのぶん写真の腕前はアップするんです。みなさんも失敗をおそれず、いろんな花火を写真に収めてください。

打ち上げ花火は背景となる夜空との明暗差を調整することで、よりメリハリのある写真に仕上がります。RAWデータ現像ソフト「Image Data Converter SR」は、“トーンカーブ”補正など豊富な調整機能で印象的な作品づくりのお手伝いをします。

連載『デジタル一眼カメラ上級者向け特別講座』は今号をもちまして終了いたします。ご愛読いただき、誠にありがとうございました。

※ “SONY”および“make.believe”はソニー株式会社の商標です
※ “α”はソニー株式会社の商標です
※ 本ページに掲載している情報は2011年7月20日の情報であり、予告なく変更される場合がございます
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